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ICEスコアによるプロジェクト優先順位決めとグロースハック手法の紹介

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目次

    ICEスコアによるプロジェクト優先順位決めとグロースハック手法の紹介

    項目内容
    この記事でわかること業務改善のアイディア、プロジェクトの優先順位を効率的に決めることができる。
    本シリーズの対象者・コンピュータサイエンス、数学などの素養があるかた。
    ・ご自身のデータサイエンス・スキルをグロースハックに応用したいかた。
    本シリーズで提供する知識・グロースハックに役立つデータサイエンス手法を体系的に学ぶことができる。
    ・各記事で紹介するpythonコードを短時間で実務に利用できる。
    次回以降に予定している内容1. AutoMLの使いかた
    2. 実践的なデータ分析手法の紹介
    3. グロースハック手法の紹介
    4. 業務に役立つ統計知識・機械学習の知識の紹介

    1.データサイエンス+グロースハックという強力な改善プロセス

     今回、ICEスコアシステムを用いて、社内の課題を整理した結果、機械学習による分析課題がいくつか見つかり、PoCを実施することになりました。ぜひご一読いただきたい内容です。

     当ブログでは、グロースハックに役立つ実践的な手法を紹介します。グロースハックでは、マネージャ、プロダクトオーナー、データサイエンティストを合わせたような知識が求められます。グロースチームは、重点領域や目標を設定した上で、プロダクトを継続的に改善します。

     サブスクリプション型のプロダクトをはじめとして、データに基づく改善プロセスが必要とされている現在、データサイエンスを用いたグロースハックは強力な手段をもたらします。

     単なる知識としてデータサイエンスの手法を知るよりも、実務では、実際の業務にどのように応用できるかが重視されます。本シリーズでは、データサイエンスの基礎、データ分析の実践的な手法、AutoMLの活用方法などについて紹介していきます。第1回では、プロジェクトの優先順位を決める際に、今日からすぐに利用できるICEスコアシステムを紹介します。

    2.なぜグロースハックが必要なのか?

     プロジェクトの優先順位を決める際に、皆様はどのようにして優先順位を検討していますか。業務の中で、複数の業務改善のアイディアがあり、どのテーマから着手したらよいか、優先順位を決めたいという状況に直面したことのあるかたもいらっしゃると思います。

     当ブログを書くに際して、筆者は、社内の各チームにどのような課題があるのかを先に把握することにしました。特定の部署、プロダクトだけでなく、各部署での取り組みの中で、どこに優先課題があるのか、何にフォーカスすれば最も効果が大きいかを知りたいと考えたからです。

     その結果、多くの課題はデータサイエンスの領域であり、機械学習などの手法が適用できそうであること、グロースチームが必要であるという結論に至りました。

    3.優先順位決めで迷ったらICEスコアシステムを使おう

    3.1.ICEスコアシステムの使いかた

     グロースハックという言葉を作ったSean Ellis氏の提唱するICEスコアシステムを用いて、業務改善のアイディアの優先順位を決める方法を紹介します。ICEスコアとは、改善案や着手すべき施策が多い際に優先すべきものを順序づける手法です。 「影響力、インパクト(Impact)」、「信頼度(Confidence)」、「容易性(Ease)」の3つの要素の平均値を算出します。

     アイディアは会社やプロダクトが成長するための源泉となる要素です。ゼロベースでアイディアを生み出す方法として、google sprintなどの方法があり、別な機会に紹介させていただきたいと思います。今回は、既存の業務改善を対象とした場合について説明します。筆者は、各部署のエキスパートに対して、現在の課題をヒアリングしました。ヒアリングで収集する情報は下記の3点です。

    • アイディアの名称
    • アイディアによって現状「As is」がどのように改善されるか「To be」
    • ICEスコア

     アイディアの名称は簡潔で短いほうが議論しやすくなります。グロースハックの専門サイト「グロースハッカー・ドットコム」ではアイディアの名称を50文字以内としています。日本語の場合、全角30文字以内でよいと思います。

     アイディアの内容を5W1Hきちんと書き出してもよいのですが、ここでは「As is」、「To be」でシンプルに記載することにしました。課題の内容をはじめて見た人であっても、「As is」、「To be」が記載されていれば、現状とあるべき姿のギャップを素早く理解することができるためです。「As is」、「To be」では下記のような内容を記載します。

    項目説明
    As is現状を意味する言葉です。問題解決のためには、現状把握は必須です。
    To be理想のあるべき姿について記載します。

    各部署でヒアリングした内容を下記のように表としてまとめます(例として記載しており、実際の社内の課題とは異なります)。

    ヒアリング内容まとめの例

     各課題について、「影響力、インパクト(Impact)」、「信頼度(Confidence)」、「容易性(Ease)」の3つのスコアを10点満点で入力します。採点するのは、課題の提案者自身が望ましく、その場合より正確性の高いスコアとなります。客観性を持たせたい場合は、各アイディアについての詳細を共有して、複数人で採点して平均値を求める場合もあります。

     例えば、10点は最もよいという評価となるため、開発が容易である場合は、容易性を10点とします。3つのスコアが得られたら、その平均値を総合点として求めます。得られたスコアは絶対的な評価ではありませんが、チームで議論して優先順位を決める際に利用できます。

    3.2. 分野別のアイディア数

     アイディアを個別に見ていくだけではなく、分野に分けることによって、全社的にどのような課題があるのかを可視化することができます。同じ分野の課題は相互に結びついていることも多いため、全体像を捉えた上で、どの分野にフォーカスするかを検討します。

    分野別のアイディア数

    3.3.グロースハックのプロセスにおけるICEスコアの位置付け

     グロースハックは、プロダクト利用者の本音をフィードバックして、ビジネスを成長させる手法です。「データ様に聞け」という言葉がありますが、プロダクト利用者の体験をデータから導き出して、顧客獲得と収益拡大に応用するデータ・ドリブンのアプローチです。グロースハックのコア要素は下記の3つとされています。

    • マーケティングと製品開発の分業体制を打ち破り、組織横断型チームを結成します。
    • 定性調査と定量調査のデータ分析を併用し、プロダクト利用者の行動と嗜好に関する深い洞察を得ます。
    • アイディアを迅速に生成・検証し、その結果を厳しい基準で評価して対応します。

     グロースハックには、伝統的な縦割りビジネスを解体し、アナリティクス、エンジニアリング、プロダクトマネジメント、マーケティングの専門家による組織横断的な協働チームを結成する力があります。グロースチームを構成することにより、企業はデータサイエンス、技術的知識、マーケティング知識を効率的に連携し、より成長の見込みが高い方法を早期に発見することができます。

     ICEスコアシステムは、優先順位決めのフェーズで用いることができます。グロースハックのプロセスは、データ分析・洞察、アイディアの生成、優先順位決め、実験を繰り返すサイクルです。このサイクルは一定の周期(1週間程度)で回すのがよいとされています。週に1度のミーティングで実験の結果をレビューします。

    グロースハックサイクル

    4.まとめ

    第1回では、プロジェクトの優先順位を決める際に、すぐに利用できるICEスコアシステムを紹介しました。難しい手法ではないので、すぐにビジネスの現場で活用できると思います。このシリーズでは、データサイエンスの基礎、データ分析の基本的なコード、AutoMLの活用方法などについて、グロースハックに役立つ実践的な方法を提案していく予定です。pythonコードを用いた分析手法などの紹介も行いますので、シリーズ全体を通じて皆様のお役に立てることができればと思います。


    著者プロフィール

    田口 健太郎 Kentaro Taguchi

    ソーシャルゲームのデータマイニング、原子力分野の研究コンサルタント、アクセンチュアデータ分析エンジニア、R&D推進室などを経て、技術顧問、講師、データサイエンティストを担当。2022年12月よりクロスマーケティング・グループにてデータサイエンティストとして従事。
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